Sunday, September 19, 2010

ペニシリン(その2):1938年オックスフォードでペニシリン研究開始



写真:チェイン博士(1906ー1979)


1938年 オックスフォード大学のチェイン博士は,これまでに発表された
微生物が産生する抗細菌物質に関する論文を200編あまりを収集。
その中に1928年発表されたフレミングのペニシリン論文を見つます。


” フレミング博士の論文を読んですぐ大変興味をもった。そのカビの
分泌する物質ペニシリンはブドウ球菌を溶解する強い作用を有する。
フレミングはカビのリゾチームの1種を発見したと思った。卵の白身に
含まれるリゾチームと異なり広範囲のグラム陽性球菌に作用する。
これらの病原菌の細胞壁には,このカビの酵素が作用する共通の基質が
あり,それを精製分離する価値がある。まず最初にペニシリンを精製す
る必要がある。私にはリゾチームの研究経験から出来ると思った。”

フローリー教授とチェイン博士は有望な抗細菌物質候補としてBacillus subtilitis
とBacillus pyocyaneusの分泌する物質そしてペニシリンの3つを取り上げ研究
することにしました。翌年からは,ペニシリンに絞って教室の全力を注ぐように
なります。


しかしペニシリンはカビの培養条件により産生量が異なること,青カビが
ストレス状態におかれた時にペニシリンの産生能が高まったり,またペニシリン
分子が大変不安定で精製の途中で壊れ易いこと(ペニシリンは分子量が310から
350ぐらいしかない)などで,その分離精製は試行錯誤の連続でした。

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Gwyn Macfarlane, Howard Florey- the making of a great scientist,
1980, Oxford University press. から翻訳。


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